JOURNAL

テディベア

私がモノづくりを始める一番初めのきっかけとなったテディベア作りに纏わる話。

小学生の時、母に教えてもらいながら初めて手縫いで作ったテディベア。

夏休みの工作だった。

ボディはそばかすが少し入ったようなオフホワイトと
淡いブルーのギンガムチェックのコットン(野暮ったいカントリー調の生地だったな…)、
手のひらと足の裏は黒に近い濃紺の土台に白いピンドットが散りばめられた綺麗なブロード生地を選んだ。

母はミシンを使っていたので一体仕上げるのもあっという間だったが、
私は本返し縫いで一針一針ちまちまと縫っていたため、とても時間がかかったように記憶している。

どのプロセスも私にとっては初めての事ばかりで簡単な作業ではなかった。
その中でもとりわけ難しかったのが顔の表情を作ること。
ほんの僅か数ミリ顔のパーツ位置を変えるだけで様々な表情に変化する為なかなか一筋縄でいかない。

やっとの思いで仕上がったテディベアは私の思いとは裏腹に、少し眉を顰めて困った表情をしていた。

足の裏にはs.sと私のイニシャルを刺繍した。

それ以降、沢山のテディベアを作っては友達や家族にプレゼントしたり、
自分の部屋に飾ってディスプレイを楽しんだりと小学校を卒業するまでは
テディベア製作に埋もれた日々を過ごした。

色の組み合わせを考えるのが毎回とても新鮮で楽しかった事、
一枚の布が自分の手によって立体的なものへと変化してゆく過程、
選ぶ素材や糸の色、太さによっても全く違った表情のものに仕上がるという事、
自分が作ったもので人を喜ばす事ができるという幸福感。

30年近く経った今でもその時の感覚や作業風景、道具や生地に触れた時の感触は鮮明に覚えている。
きっと無意識のうちに自分の身体に染み込んでいったのだと思う。

きっとこの感覚はこの先も消えることなく、
静かに存在し続け、知らぬ間に糧となり今後も私のモノづくりを陰ながら支えてくれることだろう。